いつもは、明るく楽しそうにレッスンに参加している3才の男の子A君。ある日突然、ダンスの途中で怒りだしてしまいました。
それから3週間ほど教室には来てもダンスの輪の中に参加しません。私が近づいてもママの陰に隠れてしまうのです。レッスン中ずっと撮影していた動画を何回見直しても理由がわかりません。なぜこんなことが起きてしまったのでしょうか?
ふだんは、朝眠くてぐずってしまう女の子がいれば積極的に「一緒にやろう」などと声をかけたり、教室の床にマーキングのためのビニールテープやロープを張り付けるのを率先して手伝ってくれたりと気配りもできるA君。3歳で言葉もまだままならない子でした。可愛いアシスタントができたと頼もしく思っていた子だっただけに不思議でしかたありませんでした。
ママとも相談し、理由を考えましたが、思い当たる節がありませんでした。
怒りんぼになった時期がちょうどイベントにでるためのナンバーの練習が佳境に入っていたということもあり、最初は、A君にあまりかまってあげられていなかったからと思い、振付ができていないA君に特別に個人的にフォローを入れたりしました。
しかし、かまえば構うほどプライドを傷つけてしまったのか、よけいに怒ってしまいます。
過去に読んだ、発達心理の育児書などを読み返しましたが、この時期の子は言葉があまり上手ではないので「おもい」があっても伝えることができずイヤイヤが起きてしまうのだと書いてあるだけで、肝心のなぜ?という部分や「おもい」の核心につながる手がかりがありませんでした。
そんなときにモンテッソーリ教育に詳しい友人と話す機会があり聞いて、問題の答えに近づく手がかりをみつけました。
モンテッソーリ教育は、マリア・モンテッソーリという女性医学者によりイタリアではじめられた教育です。GoogleやAmazon、Wikipediaの創設者などITの巨匠たちや、日本では藤井聡太七段もこの教育を受けています。
モンテッソーリ教育では、この幼児期の子の「いやいや期」という特徴を、「敏感期」としてとらえています。
「敏感期」は、順序・習慣・所有・場所にこだわる「秩序の敏感期」、運動の敏感期、お手伝いなどにこだわる「社会的行動の敏感期」、読み書きなどにこだわる「言語の敏感期」があるようです。
この話を聞いてピン!ときました。
それは、A君が怒り出した時期と、イベントナンバーの練習を重点的に始めた時期と重なります。
いつものレッスンのはじめは、アイスブレークといって緊張をほぐすためにスキンシップをはかる時間をつくり、ハイタッチや抱っこしたり肩車したりして、私と子どもたちがジャレあって信頼を深めています。
この時期は、イベントナンバーの練習時間の割合を増やしたこともあり、このスキンシップの時間をなくしていたのです。
イベントがおわりそのことに気づき、さっそく次のレッスンでは、スキンシップの時間を復活させました。とびっきり楽しい遊びをしました。
すると、ママのそばから離れようとはしませんでしたが、スキンシップの時間を楽しむ輪の方を羨ましそうに笑顔で見ていました。
仲間に入りたくても、照れくさくてなかなか入っていけない。ママにつんつんやられながらこちらを笑顔で見ています。この日は誘っても、またママの陰にかくれてしまったので、無理に誘いません。
次のレッスンでもとびっきり楽しい遊びを用意していきました。この日は、スキンシップの時間だけに参加しました。めちゃくちゃ笑顔でした(笑笑。
そして、さらに次のレッスンではとうとうフルで参加し、いつもの準備も率先してお手伝いをしてくれて、さらにぐずってしまっている女の子の手をひいてくれたりもしていました。この日、偶然かもしれませんが、A君のしゃべる言葉がとても聞き取りやすくなっていて、この日はおばあちゃんが付添いできていましたが、最近突然しゃべる言葉が増えたと話していました。
まさしく、モンテッソーリのいう「秩序の敏感期」と「社会的行動の敏感期」が原因だったように思います。
絶対という確信はありませんが、大人が理解してくれようとしている行動をすることに大きな意味があるように感じます。自分を理解してくれようとする人を信用するのが人間の本性のように思います。
信用できる相手になることが先生として大切だなと改めて実感しました。
言葉の発達の過渡期にもあり、かなりはっきりした言葉で意味のある内容を口にしてくれました。
信頼感、安心感がある相手として少なからず見てくれているのかなと、、、。
次は、間違いなく「言語の敏感期」がくるのでしょう(笑笑
現在のレッスンでは、①スキンシップの時間、②運動遊びの時間、③ダンス基礎練習、④振付の時間、という4つの項目の流れで1回のレッスンを行っています。
しかし、出演するイベントの日が近づくとどうしても④振付の時間をながくとり①や②の時間は短くなるか割愛するというパターンにせざるを得なくなります。
今後の課題としては、いつもと違う流れがあるということも子どもたちに理解できるようにしなければなりません。そして、それをどう理解してもらうかを考えていきたいと思います。